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静寂と四季の彩り、湯に浸り
人は本来の姿に還る

  • 白骨物語
  • 守る人

Interview 05

今日の朝、窓を開けると
昨日とは違う景色がある。

私は今から四十数年前、アルバイトとして、九州から白骨温泉にやってきました。

昔は今と比べて、施設設備も道路も十分に整っていませんでした。冬は、スコップで一日中雪かきをしていることもありました。まだ、お客様がそれほど多くなかった時代のことです。
三十年ほど前の秘湯ブームをきっかけに、客数は一気に増えました。当時は、本当に忙しかった。ただ、今の白骨温泉は原点回帰しており、無理にたくさんのお客様を迎えるのではなく、ゆっくり滞在してもらうことを大切にしています。

お客様の表情は、常にそっと気にかけています。声をかけられたくない方もいらっしゃるので、相手に応じて、適度な距離感で接するようにしています。リピートでいらっしゃった方には、さりげなく覚えていることを伝えると、喜んでいただけることも多いです。

白骨温泉には、年に二十回、三十回と来られる方もいます。大自然のほかには、何もないこの温泉に、何度も。きっと、訪れたいと感じる「何か」があるのでしょうね。その正体は、私たちにもわかりません。正確な言語化ができるものではないのかもしれない。

でも私自身、ここの景色やお湯に心を救われることは多いです。悩んだとき、一人でゆっくり温泉に入っていると、考えがほぐれ、整理され、新しいアイデアが浮かんできます。小道に落ちている葉を見て、自然の美しさにはっとすることもあります。この環境が日常ではない方であれば、私以上に、いろいろなことを感じられるのかもしれません。

以前、湯川荘の元紀さんが「毎日がイベントだ」と言っていました。そうかもしれない、と思います。自然は、常に表情を変えます。今日の朝、窓を開けて見る景色は、昨日とは違っています。生き物はすべて、どんどん変わっていく。自分も例外ではありません。同じ景色を見ても、同じ温泉に入っても、自分が変わると、感じ方が変わります。

本当は二泊くらいしていただいたほうが、白骨温泉の自然を感じ、心身ともに休めるのではないかと思います。もちろん、こうしなければならない、と強いることはしません。この場所のどこをよいと感じるか、どんな過ごし方が心地よいかは、お客様一人ひとりにゆだねています。

私たちが思う白骨温泉のよさが、どれだけ伝わるかはわかりません。どこへ行くか、どう過ごすか、選ぶのはお客様です。経済や社会情勢など、自分たちではどうにもできないことも、これまでたくさんありました。
ただ、お客様がここで感じて言葉にしてくれたことに、嘘はないはずです。私たちが、あるいはお客様が語る白骨温泉の価値に共感した方に、来てもらえたらうれしいです。

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