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静寂と四季の彩り、湯に浸り
人は本来の姿に還る

  • 白骨物語
  • 守る人

Interview 07

守る人がいて、訪れる人がいる。
そのすべてに意味がある。

ある雪の降る日、ひとりのお客様が、連泊でいらっしゃいました。その方は「ここで読書をしようと思い、本を三冊持ってきた」とのことでした。
お帰りの際、「読書は進みましたか」と尋ねると、その方は微笑んで答えました。「降ってくる雪を、一日中ぼーっと眺めていました。雪の速度や降り方を見ていたら、二、三ページも進みませんでした」。

そんな過ごし方ができるのが、白骨温泉です。

お客様のなかには、到着されたときと次の日で、別人かと思うくらい表情がやわらかくなる方がいらっしゃいます。自然やお湯が、心をほどいてくれるのでしょうね。三世代にわたって来てくださる方や、婚約、入籍、出産など、人生の節目で来てくださる方もいらっしゃいます。

ここは古くからの湯治場ですので、体をケアしに来られる方も多いです。お食事も、身体と心によいものをという一心で、地元で採れた食材を使い、温泉水で調理しています。
毎年のたくあんは主人が漬けるのですが、「今年の大根の出来具合はこうだから、こういう漬け方をしようかな」と、いつもじっくり考えています。お客様に喜んでもらいたい、元気になってもらいたい。その気持ちは、きっと伝播するのだと思います。

お客様は、ここで感じ取ったことを、そのまま伝えてくださいます。「温泉に入っていたら、地球に包まれているような気がした」「お母さんの胎内にいるようだった」、いただいた言葉に、はっとさせられることがたくさんあります。私も温泉に入っていると、自分が温泉の一部に溶け込んでいくような感覚を抱きますね。

「還る場所」って、自然なんだと思います。

冬、雪に覆われた景色を見ると、「本当に春になるのかな、この木たちは芽吹くのかな」と不安になるんです。でも、日差しが暖かくなってくると、木がだんだん元気になってきて、節分を過ぎるころから、鳥のさえずりがすごく明るくなります。誰が「春だよ」と教えるわけでもないのに、桂の木は、芽吹く前にまず赤くなり、黄色くなって、新緑になる。吊橋のたもとには桜の木が一本あって、春になると満開になります。そうやって、ちゃんと季節は巡っていくんです。

自然のなかで生きていると、すべてに意味があるように思えてきます。
水があり、温泉がある。そこに夫や子供たちがいて、他の宿・施設のみなさんがいて、お客様がいて、私がいる。目に見えない思いが、響き合っているような気がします。

白骨温泉は、どの季節に来ても絵になります。ここで過ごす時間が、自分の人生に必要だと感じたら、いつでもいらしてくださいね。

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